小説『遥かなる空への想い』
- 第4章 黒雲と静寂のはざまで -
今は夜。曇り。
昼間は明るく、その輝かしいさまを見せてくれた空。
それが夜になると、こうも違った顔を垣間見せるようになるのだろうか・・・。
上は厚い雲が天を覆い、下は厚い雲が地を覆っている。
ともにどっしりと、まるでそこに根を下ろしたかのようにたたずんでいる。
まわりは暗く、今どこをどう飛んでいるのかさえ及びがつかない。
風はなく、日の光もない。
遥か上空にまたたく星の光さえも、この分厚い雲にさえぎられ、
一筋たりともここに届くことはない。
ただ静かに、雲はその空間を大きな要塞のごとくに作り上げていた。
頬に湿り気を帯びてくる・・・。
どうやら、俺自身もその雲の中に入ったようだ。
見るからにいかにも重そうな雲は、そこに分け入る者を容赦なく包み込み、
みずからが持つ水蒸気でシャワーの洗礼を浴びせる。
その水量は見た目以上にすさまじく、息ができないほどである。
果たしてこの「要塞」は、そこに立ち入った部外者を
無事に生かして帰してくれるだろうか・・・?
人間とは、ときに自分自身の心の弱さを補うため、
あるいは逆に心の強さを確かめるために、
こういった暗闇の中を走ることがある。
この俺も、今はそんな気分になっているのかもしれない。
未知への不安と、現実世界での不満が入り混じった感じだろうか。
人の心というものは、言葉や図ではたとえにくいものだ。
だが、現在を中心として動いているように見える「時」にも
過去があれば未来があるように、
闇あれば光もまたあるものだ。
心の闇・・・ それは、えも言われぬ複雑なもので、
一朝一タに解決できるものではない。
ならばどうするか?
答えはひとつ・・・
「自分が、強くなるしかない・・・!」
刹那、黒雲の間からほのかに光が漏れてくるのが見えた。
その光は、日の明けぬ今この時においては、
さして明るいものではなかった。
しかしその光――月あかりは、その存在感を強烈に訴えかけ、
まるでこれから進むべき道を指し示しているようであった。
「出口だ・・! やっとこの暗闇から抜けられる・・・・・!!」
暗い雲に覆われた闇夜の空間・・・
それは確かに、ただの空間ではあった。
だが、ここを通った者がそれを自分の人生や気持ちに見立て、何事かを思った時、
そこから忽然と差す一条の光は、何者にも代えがたい感動と、
そして大きな希望を与える。
自分は、まだまだ捨てたものではないのだ、と・・・。
淡く黄色い光は、やがて空全体へと広がり、
空をほんのりと、少しずつ桃色に染めていく。
空はようようにしらけ、東の空から真っ赤な太陽が顔を出す。
夜明けだ・・・。
自然の神秘というもの・・・
その本質を、その魅力をもっともっと知りたい・・・!
・・・俺は、この時点ですでに幻想世界の住人になっていたのであった・・・。
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