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小説『遥かなる空への想い』

- 第5章 太陽と月がかさをかぶったとき -





今は早朝。晴れ。

・・いや、曇りと言ったほうがいいだろうか。
どちらともいえない微妙な空模様である。

日は昇り、空は徐々に白み、明るくなっていく。
その空は青く、一見晴れているように見える。
だがよく見ると、なんとなく曇っているようにも見える。
その様子は、まるで水でうすめた牛乳を大空いっぱいに流したようにも見え、
また、刷毛で青空に白い筋模様を描いたようにも見える。

「うーん、どっちなのだろうか・・・?」

風は心地よく、頭上には時間が経ってもほとんど変わらず
その層状の雲は広がっていた。
それは見る者に平面的で、ぼーっとしているかのような印象を与え、
しかしそれほど厳しい表情を見せていない、意外と穏やかな雲だった。
まわりには、すじ雲やひつじ雲が、ところどころに現れては消え、
また現れては消え・・・を繰り返していた。

「腹減ったな。なんか食べ物はないかな・・・」

そうは思ったものの、今は夢の中。
おなかが減ろうはずはない。


太陽は、時間とともにその高度を上げ、
やや南に傾きながら着実に西へ西へと進んでいく。
この青き星が誕生した太古の昔から、誰がそう定めたのであろうか・・・。
太陽も月も、そしてあまたの星たちも・・・
すべては、東から西へと動き、空の下に沈み、そして空の上に浮かんでいく。
さらにその間、太陽と月――この2つの星によって、
青き星の下に住まう者達に、光と闇を交互に、分け隔てなく与えてくれる。
いにしえの民は、古代よりその神秘性ゆえか、
これらの星を神として崇め、たてまつってきたという。
なんとも不思議な定めというか、運命というか・・・じつに興味深いものだ。


やがて、太陽は南中高度に差しかかり、そこを通り過ぎようとしていた。
その時である。
太陽は、突然まぶしい光を放ち、
薄く白いベールにその身を隠しながらも、その上にみずからを中心点として
大きな虹色の輪を描いていた。
その姿を見て、俺は思わず驚嘆した。

「こ、これが日笠ってやつなのか・・・!?」

ライトレモン色の太陽に、虹色の日暈。
その光景は、あたかも天空の世界から女神が現れたかのごとく美しく、
そしてとても素晴らしいものであった。
太陽から放射状に広がる光の輪・・・
それは、あたかも太陽のまわりに目には見えないプリズムがあるかのように、
放たれる光を見事なまでに7色に分けていた。


しかし、白昼の天体ショーはまもなく終わりを迎えた。
上空に漂う白いベール状の雲は、心なしか高度を下げたような気がする。
・・・いや、厚みを増したと言ったほうが適切だろうか。
その雲――巻層雲は、日が落ちるにしたがってその厚みを増し、
次第に高層雲となって日の光をよりさえぎる。
おそらく下界では、地物に影さえできないだろう。

結局、この日はそのまま高層雲が空から消えることなく、
本来なら拝めたであろうはずの赤い夕焼けさえも、
この雲が光を吸収し、鈍い赤茶色に空を染めただけに終わってしまった。


その夜・・・

俺は、半ばあきらめの入り混じった暗い表情で低空飛行を続けていた。
雲は相変わらず厚く、夜空をわずかな隙間さえびっしりと覆い尽くしている。
これでは、とても星空を拝めそうにない・・・。
だがこの時、月はその黄色く丸い輪郭を、雲の上からくっきりと映し出していた。
それもあろうことか、月は、光の輪をそのまわりにあらわしていた。

「つ、月暈・・・ なんてことだ・・・。」

驚きのあまり、俺は思わず声が出せなかった。
月暈・・・ 夜空を照らす真っ白な光の輪は、
日暈ほどの明るさはないものの、それでも十分に美しいものだった。
ことに今は夜。周囲の暗さもあいまって、より力強く見える。
神々しくさえ感じるほどだ。


自分が、まるで何者かに守られているかのように、俺は感じた。
自然は、この世に生きるもの1体1体を適当にあしらっているようで、
じつはしっかりと見てくれていたりするのだろうか・・・。

まだまだ、わからないことが多いものだな・・・
・・と、自分自身つくづくそう思った1日であった。



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