小説『遥かなる空への想い』
- 第7章 天空の怒り・雷光 -
今は昼過ぎ。天気は雷雨。
俺は今、上空を飛びながら迫り来る雷雲をなんとかやり過ごそうと
必死になって戦っている。
もとより自然を相手に格闘するつもりはないが、
ここで雷をまともに受けたら、きっと黒コゲどころでは済まないだろう。
雷雲――盛り上がった積乱雲にいくつもの乱層雲が連携してできあがったそれは、
あたかもそれが巨大な悪魔であるかのようにむくむくと盛り上がり、
みるみるうちに空間全体を漆黒の闇に染め上げる。
今がたとえ昼間とはいえ、この黒き悪魔の支配下では、
天からの明るく暖かい光はとても望めそうにない。
黒々と勢力を拡大し、どこまでもとどまることを知らない黒き悪魔・雷雲。
雷雲は、やがてその力を誇示するかのように、しきりに稲妻を放ち、暴れ始めた。
「くっ、これは本格的に来るか・・?!」
うす紫色の光が幾筋もジグザグを描いては空間を走り、
そのたびにすさまじい轟音をとどろかせ、悪魔自身の姿を
威嚇するかのように紫色に、その闇の中に浮かび上がらせる。
地上ではきっと、大雨が長きにわたって降っていることだろう。
現にこの悪魔の体内にいる俺でさえ、全身がしとしとと湿っていくのが感じられる。
雷は、しかし下界に落ちるものだけでなく、雲と雲の間に伸びるものもある。
一般に幕電といわれるそれは、雷雲を飛行中の俺にとってかなりの脅威だった。
湿気を帯び、より電気を通しやすくなっている俺のいくつか隣を、
いくつもの稲光が飛び交っていく。
時折、肌にビリッ! と刺激を感じるときさえある。
大変に危険である・・。
だが、雷雲という名の巨大な悪魔には大きな弱点がある。
悪魔は、やがて調子に乗りすぎたのか、しだいに雨や雷による攻撃をやめ、
ついにはみすぼらしい姿に変わっていった。
この悪魔は、雲であるがゆえに、みずからの持つ水分の補給が絶たれると
途端に勢力を失ってしまうのだ。
時間というものは、やはり無常である。
こうして、悪魔は空から消え、地上には再び太陽の光がよみがえった。
ただ、いつの日かまたさっきのような悪魔が現れるかもしれない。
空とは、常に静かなようで動きのある、なんともダイナミックな空間なのだろう・・。
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