小説『遥かなる空への想い』
- 第9章 幻滅する空のはかなき生き物たち -
今は朝方。
俺は、夢の中で空を飛び回り、ここまでにいろんな雲を見てきた。
大きな雲や小さな雲、白っぽい雲や黒っぽい雲。
その形もさることながら、色合いが微妙でじつに様々だ。
時には、何かの動物ではないかと思わせるような形の雲があったり、
あるいは雲そのものが巨大な生き物のように見えたりすることがある。
人間とはつくづく不思議な生き物で、
おのれの感覚や経験にもとづいて、形の定まっていないものを見ると、
意外と何かの形にたとえ、それに見立てようとする習性があるようだ。
ありのままに万物を見通せるだけの眼と純真な心があればそれに越したことはないのだが、
俺とてひとりの人間。なかなかそうはいかない。
たとえば今、俺が見上げた空に浮かんでいる雲・・・
一般には「わた雲」といわれる、特に夏には海水浴なんかでつきものの雲だ。
それは、複数同じ高さの空に浮かんでいたら、
ライオンやゾウの群れがゆっくり、ゆっくりと歩いているようにも見え、
あるいは盛り上がって巨大化すると、得体の知れない怪物や悪魔のようにも見える。
うろこ雲にしても同様である。
びっしりと細かく、しかも規則的に白い雲が並んで浮かんでいる姿は見事なもので、
それ全体が、魚の鱗のように見えるものだ。
雲の粒が大きくなったら、その白く美しい姿がヒツジの群れにたとえられ、
ひつじ雲と呼ばれるのだろう。
ときに今、一面に青い空が広がっている。
太陽はいよいよ高くなり、その輝きを増している。
その雲ひとつない空に、突然妙な形の雲がいくつも現れだした。
「なんだろう、あれ? なんかクラゲみたいだな。」
その雲は、クラゲか、あるいはキノコのようにも見えた。
だが、どこからか現れては消え、また消えては現れる。
その姿は、なかなかにはかないものがあった。
それに、空に浮かぶクラゲ達は、一様に孤立して現れ、
他の雲仲間たちと手を組むことがない。
空のクラゲは、孤独が好きなのだろうか・・?
「ふっ、まるで俺みたいだな。ある意味で同情するぜ、クラゲさんよ・・。」
そうひとりで俺がつぶやくなり、クラゲ達は、何も言わず静かに立ち去り、
もはやその姿を見せることはなかった。
空の世界――その遥かなる空間の下で生きる俺たちにとっては宇宙空間であり、
まだまだ神秘に満ちあふれた世界である。
見えない・・何も見えないはずのところに、自分なりの道を作る・・
その道を、今、俺は再び高い山へと定めた。
「彼」に会うために・・・
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