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小説『遥かなる空への想い』

- 第11章 不気味な色光を発する悪夢の空 -





今は昼間・・・のはずなのだが、どうも様子がおかしい。

空の輝きが、いつもとは違う。
なんかこう・・、なんと言えばいいのか・・・
ひとことでは言い表せないような、そんな空模様である。

今、俺は厚い雲の下を飛んでいる。
ただ、その雲が異様に分厚く、びっしりと隙間なく全天を覆っているため、
下界は日の光さえ届くことはない。
それどころか、雲全体が尋常でなく重い・・・そんな感じがする。
もっとも、それだけなら、普通の悪天のときにもありがちなのだが、
今回はどうにも事情が違っていた。
空を見上げた限り、空と雲のすべてが、
なんと不気味な黄緑色に一様に染まっていたのだった。

・・いや、黄緑色というよりも、むしろ黒味がかった黄土色というべきか。
風はピタリとやみ、不気味なくらいに静まりかえっている。
それも禍々しいくらいに、である。

「な、なんなんだ、この空の色は?! 気持ち悪いな。
 まるでアレだ、たとえるなら・・・」

たとえるなら世紀末の空、という感じがしないでもない。
どす茶色い空が、ただ広がるばかり。
すさんだ荒野がどこまでも続いているかのように、空は濁っている。
さらに、その黄土色の雲の下に、しだいに黒猪がたくさん飛び交うようになった。

黒猪は、「くろっちょ」という文字どおり、雨の日によく空を高速で飛んでいる黒色のちぎれ雲で、
その姿が黒色のイノシシのように見えることからそう呼ばれている。
ただでさえ不気味な黒猪が、この黄土色の雲の下に現れると、
当然のごとくえも言われぬ不安がよぎってくるものだ。

「こりゃあ近いうちに来そうかな?
 ・・ん? 冷たいのが顔に当たったな。」


しばらくして、雨が降り始めた。
全身が程よい湿り気を帯びてきているのがわかる。
上空の空気が、かなり湿っていたのだ。
そう感じるやいなや、突如として強い風が吹き始めた。

「うわあぁぁ!!」

その風にとられ、俺は刹那バランスを崩しかけたが、すぐに立て直した。
風は、いわゆるジェット気流や偏西風といった類のものではない。
それらはもっと高いところに吹く風だ。

「きっと台風に違いない。早くここをなんとか抜けないとやばいな・・・」

空は、いよいよ雨脚を強め、みずからをより黒く、
より不気味なものへと変貌させていく。
その勢いは衰えることを知らず、みずからの下で暮らす全ての者たちに恐怖を与えた。
思った以上にパワーがありそうだった。

結局、夕方になってもそのパワーを失うことなく、
台風は周辺の雨雲と手をつないで雨を降らせ、
その雨と風で下界の者たちを攻撃した。
全体が一層暗くなってきた・・・きっと夜が近づいたのだろう。
おそらく地平線の向こうに沈んだであろう太陽の、日没の光に照らされ、
雲は一様に、下界がすでに真っ暗になってもなお、
空をほのかに、しかし不気味にえんじ色に染め上げていた。
その様子は、有翼悪魔がコウモリのような大きな翼を広げ、
威嚇しているかのようでもあった。

「ああ、もっといい空を拝みたかったのに、なんでこうなるのか・・
 まったく、ついてないぜ、チクショー!」

そうひとり叫んだ直後のことだった。
突然、何の前ぶれもなく一筋の真っ白い稲光が厚い雲間から放たれた。
その光は、あたかもこの瞬間を狙っていたかのように俺のほうへと一直線に飛んできた!
もはや避けることはできない!!

直撃!! そして、ブラックアウト・・

そこにはもう俺の姿はなく、今まで飛び回っていた空とは別の、遠く離れた空へと
瞬時にして転送されていたのであった・・・。



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